ベストテンブンちゃん

シンガ－ソングライタ－「中村ブン」をご存知でしょうか

ヒット曲？「かあさんの下駄」かな「いいね旅は」かな・・・

出会ったのは、もう20年以上前のこと

フォークコンサートと聞いて気楽に行ったのに

「深夜輸送」という曲で涙ボロボロ・・・

そして「かあさんの下駄」「自転車にのって」

バイオリンの前奏だけで涙がでる

みんな昔は貧しかったんだ、淋しかったんだ

だから忘れちゃいけないんだよ

昔があって今があることを

家族がいて、友達がいて、自分がいることを


2004.12.7　中野ゼロホ－ルにて	ブンちゃんの歌には欠かせないバイオリン　　　　　林美智子さん

1	かあさんの下駄　　　　　　　　　　　　　　詩・曲　中村ブン
	世界中で一番きらいなものは　かあさんの怒った顔世界中で一番うれしいのは　かあさんの笑った顔世界中で一番つらいのは　かあさんの泣いた顔隣のおばさんと出かける時も　父兄会で学校へ行く時もかあさんはいつもすりへった男ものの下駄をはいて行った「これしかないんだから仕方ない」って大きな声で笑ってたけどぼくにはどうしてもかあさんのように笑うことができなかった新聞紙に包んだ新しい下駄を　両手にかかえて息をきらして「ただいま」ってえばって戸を開けたら　かあさんは今日も内職してた「かあさんこれ・・・」って包みを渡したら「何だい」って少し頭をかしげた「いいから早く開けてみてよ　ぼくのプレゼントだよ」包みを開けるとかあさんは　こわい顔してぼくに言った「お前これどうしたの　この下駄どこからもって来たのいくら貧乏してても人様の物に手をかけるような子に育てたおぼえはないよ情けない・・・」って　ふるえながら　下駄とぼくをにらんでた「違うよかあさんぼく買ったんだよ」「嘘をつきなさい　お前に　どうしてそんなお金があるの小遣いだってあげたことないのに」「弁当代ってもらう中から毎日五円づつためてたんだよタコ糸に通してずっと前から　ためてたんだよ」「赤い鼻緒の下駄を買いたくて　かあさんをびっくりさせたくて内緒にしていただけなんだ　悪いことなんかぼくしてないよ」下駄を包んだ新聞紙の上に　大きなしずくがボトボト落ちた「悪かったね」って言って子供のぼくに　何度も何度も頭を下げた「すまなかったね」って　も一度言ってあとは言葉にならなかったぼくが初めて　生まれて初めてかあさんの涙を見たのはそれは小学六年生の冬
コンサートでは何度聞いてもハンカチを濡らしてしまう。私自身、貧しかったとは思わないが、裕福だとも思えなかった。「科学と学習」を購読したかったが買えなかった。「ヤクルト」を飲みたかったが我慢した。この歌はブンちゃんの実体験かどうかわからないが、歌の中の子供、なんとも愛おしい。
2	深夜輸送　　　　　　　　　　　　　　　詩・曲　中村ブン
	笑われた長い髪を短く切って　眠い目をコーラでさましながら大型トラックをカッ飛ばす時　世の中恐いものありゃしないだけどひとつだけ恐いのは　メシ屋のおばちゃんの口ぐせさ若いからってムチャしちゃいけないよ　あんたら身体しかないんだからおふくろみたいに口うるさいけど　今夜は素直に聞けたりしてこの間も真夜中のドライブインで　腕相撲していて言われたよお前の手は女みたいにヤッこいから　こんな仕事に向いてないとだけど近頃手のひらも　身体もゴッつくなってきてダボシャツが似合うようになっちゃったけど　これでも嫁さん貰えるのかなこんな事してかせいだ金を　賭事なんかで負けたりして仲間はいつも思っているよ　百メートル先は地獄だと無理して小銭を貯めたって　一度事故やりゃオシャカだと幸せそうな街の灯りは　後ろへ後ろへ飛んでって焦る気持ちと寂しさだけが　どこまで逃げても追いかけてくるスズメがつれてきた朝焼けを　まぶしいなあなんて思ったりして
この曲を初めて聞いた時、涙が流れ落ちた。歌を聞いて泣いたこと自体初めてだ。まるで自分のことのように感じたのだ。大学在学中に家業を継いだ私は年末ともなると深夜まで働いた。夜中の間に材料を取引先から引取り、翌日の準備をする。働いても働いても追いつかなかった。仕事から逃げ出そうか、いっそ事故でも起こせば楽になるなと高速道路の中央分離帯に激突しかけたこともある。大学の仲間は就職した後もよく会っているらしい。俺だけ下町で埋もれていくのかと悲嘆した。暴飲暴食は当たり前、いつ死んでもいいくらいに考えていた。それでも続けてきたのは母がいたからか。この曲に出会って「俺だけじゃない」と思えた。
3	夕焼け空がにげてくぞ　　　　　　　　　　　　詩・曲　中村ブン
	君はボケが好きなのかい？　いつも犬小屋にもぐりこんで給食のパンも一緒に食べて　ほら半ズボンが毛だらけだぞそんなのろまなおじいさん犬の　どこがそんなに好きなんだ？ボケとばかり遊んでるから　顔までボケに似てきたぞ夕焼け空がにげてくぞ　早くみんなと遊んでおいで君は父さんいないのかい　お風呂はいつもひとりで来て体をちっとも洗わないで　ちらかったオケばかり片づけてるあいつら湯舟で泳いでるのに　そんなことしなくていいんだよお尻がこんなに冷たいぞ　お尻がカゼをひいちゃうぞあたま洗ってあげるから　100数えるまで入っておいで君のとしはいくつだい？　「むっつ」って言うと1年生だねそんなこと聞いてないのに　「ママがお店に行ってもさボクはさみしくないんだよ　ボクはつよい子なんだから」なんてようしもっとつよくなれ　ようしもっとつよくなれぼくを相撲で負かしたら　君に柏餅買ってやる　ボケの分も買ってやる
この曲は「欽ちゃん」の番組のエンディングで使われていたそうです。淋しい少年を包む今にも泣き出しそうなブンちゃんが見えてきませんか。
4	風の花　　　　　　　　　　　　　　　　　　詩・曲　中村ブン
	風の花が舞う駅のホームで　別れた場面さえ夢の中こんな所でまた逢えるなんて　やっぱりここは不思議の国だねこの子が君の子供だなんて　笑うと左のエクボまで似てる君のスカートしっかり握って　オシャマな顔で僕にＶサインああ時の流れはまるで銀河鉄道　スペースマウンテンよりも速いあの日の君は哀しみ乗り越えて　今ではやさしい母親の顔風の花が散る駅のベンチで　別れを言い出せず泣いていた二度と君には逢えないと思ってた　やっぱりここは魔法の国だねミッキーマウスのポシェットさげて　君のまわりで蝶々がヒラヒラそっと見守るやさしいまなざし　おすまし顔の黄色いリボンああ時の流れはまるで銀河鉄道　スペースマウンテンよりも速いあの日の君は少女の時を過ぎ　今ではやさしい母親の顔ああ時の流れはまるで銀河鉄道　スペースマウンテンよりも速いあの日の汽車に乗り遅れた僕は　今でもひとりで気ままな暮らしさ
初恋の人はどうしてるかな、ふとそんなこと思う時がある。もう30年も前のことだ。とうに思い出という箱の奥底にしまいこんだ筈なのに。初恋って思い出さなくても、けっして忘れることはないものでしょ。
5	風の中の天使たち　　　　　　　　　　　　　　　詩・曲　中村ブン
	北風なんて寒くない　風の中の天使たちころんでみろ　ケガしてみろ　だけどだけど　ベソはかくなよベソをかいたら天使じゃない　泣きごと言ったら子供じゃない起きあがれ　涙をふけ　困らせてくれ　いたずら天使カエルもヘビもこわくない　風の中の天使たちみつめてみろ　さわってみろ　丸い目をして　笑っているぞ動物ぎらいは天使じゃない　遊ばなければ子供じゃない元気を出せ　大声出せ　羽根をのばせよ　わんぱく天使ダメな子なんていないんだ　風の中の天使たち信じてみろ　捜してみろ　君にもいいとこたくさんあるぞ勉強ができても天使じゃない　やさしくなければ子供じゃないのんびりやれ　明日がある　夢をなくすな　僕らの天使
どうですか、子供を見つめるブンちゃんのやさしい瞳。実際に少年野球チームに関わっているブンちゃんらしい詩だ。
6	たわし先生　　　　　　　　　　　　　　　　　　詩・曲　中村ブン
	ぼくらのクラスの先生は　女の子をいじめると青いヒゲを押しつけて　顔をゴリゴリこするから恐怖のたわし先生って　みんなはいつも言うんです掃除をさぼった時も　嘘をついてバレた時も大きな両手で抱きしめて　やっぱりゴリゴリするんですお風呂の匂いがしてました　父さんの強さに似てましたぼくらのクラスの先生は　相撲を取るのが大好きで昼の休みはいつだって　みんなを砂場につれてって相撲のケイコをするんです　勝ち抜き戦をするんです相手がどんなに強くても　相手がどんなに弱くても次から次へと投げとばし　真剣勝負をするんです一度も先生に勝てなかったけど　父さんの強さに似てましたぼくらのクラスの先生は　歌がとってもヘタッピィで遠足のバスの中でも　キャンプで歌を歌う時も逃げ回っていたのです　小さくなっていたのですそんなたわし先生が　卒業式の時だけは両方の目を赤くして　蛍の光を歌ってくれた調子っぱずれの別れの歌が　ヒゲの痛さに似てました
こんな先生がいたらいいですね。みんな素直な子に育って、先生を理想の人間像として生きるのじゃないですか。こんな先生に出会えた子は幸せだ。
7	自転車にのって　　　　　　　　　　　　　　　　詩・曲　中村ブン
	自転車にのって　ゴロちゃんが走るサチオくんも走る　コージくんも走るマリッペも走る　みんな走るチリンチリンとベルをならしながら　ぼくに手をふりながらぼくも大人になったら一番先に自転車を買おう　自転車を買いたいよ背番号のついた　そろいのユニフォームでみんなが呼びにきて　「野球をしよう・・・」ぼくもやりたいけど　トレパンしかないから広場の草むらに寝ころんで　ぼくはひとりでシラけてるぼくも大人になったら一番先にユニホームを買おう　ユニホームを買いたいよ夕焼けの町で　かくれんぼしてると誰かが呼びにきて　サチオくんがかえるマリッペもかえる　カラスもかえる材木のかげにかくれて　ぼくはひとりでかくれんぼぼくも大人になったら一番先にかあさんを買おう　かあさんを買いたいよぼくも大人になったら一番先にかあさんを買おう　かあさんを買いたいよ
なんとも切ない詩、バイオリンの伴奏がつくとまたまたハンカチなくしては聞けません。
8	いいね旅は　　　　　　　　　　　　　　　　　詩・曲　中村ブン
	ポケットサイズのウイスキーを買って　大急ぎで三杯飲んで窓の景色を酒の肴に　揺れる列車に身をまかす右の窓は雪化粧の山々　左の窓は　広すぎる海古い幻灯を見ているように　いろんな事が浮かんで消えるいいね海は　いいね酒は　いいね海は話相手は誰もいないから　窓のガラスに息を吹きかけ指で何かを書こうとしても　ホロ酔い気分で何も書けない人を傷つけてそれには気づかず　人の言葉にはすぐ傷ついてそんな昨日までを知ってか知らずか　だまって列車は走り続けるいいね旅は　いいね酒は　いいね旅は
ほのぼのとして、旅に出たくなります。ホロ酔い気分でひとり旅にでるなんて、けっこう贅沢なことかもしれませんね。
9	人がいる　　　　　　　　　　　　　　　　　　詩・曲　中村ブン
	季節はずれの山小屋に　街を逃げてやってきた枯れ草の上に大の字になって　久しぶりの青空を仰ぐ空気はうまいし温泉も出る　最高だぜって思ってたけど妙におれはイライラしてきた　何かたりない　何かたりない人がいない　人がいない　恐くなるほど人がいないおれには住めない　やっぱり住めない　人のいない所なんかだから帰ろう　とにかく帰ろう　今すぐ帰ろう人込みの中へ都会の中のアパートは　部屋は狭い　お風呂もない大声出せない　ギターを弾けない　いつも他人を気にしているお金もない　車もない　最悪だぜって思ってたけど妙におれはイライラしてない　心が静かだ　心が静かだ人がいる　人がいる　叫びたいほど人がいるおれはいつまでも　ここに住みたい　かかわり合いたい　心もからだもだから平気さ　汚れた街でも　だから平気さ人さえいれば人を愛して　子供が生まれて　子供を愛して　人を愛しておれはいつまでも　ここに住みたい　かかわり合いたい　心もからだもだから平気さ　汚れた街でも　だから平気さ人さえいればランラララランラン
ブンちゃんはコンサートで最後の部分を繰り返し繰り返し歌っています。長いことラストの曲として歌っていました。ブンちゃんの人づきあいを垣間見るような曲です。
10	渋谷でのんだくれてる　　　　　　　　　　　　詩・曲　中村ブン
	俺が疲れたと思うのと、親父が疲れたと思うの・・・俺が寂しいと思うのと　親父が寂しいと思うの・・・俺が思うあと十年・・・親父が思うあと十年・・・雪を知らない街の　三度目の冬がもうすぐ終わるのに　何も出来ないでいる俺火の気のない部屋だから捨て猫を拾ってきて　抱いて寝ている親父が死ぬ思いで　あんなに好きだった酒を　やめたのに今度は俺が酒びたりそして今日届いた　ひらがなだけの親父の手紙を読みながら渋谷でのんだくれてるなぜこんなに飲まなきゃいけないのか自分でも分からずにあの日仏壇の前に　ポツンと座って動かなくなった右手を叩いて泣いてた親父いい目も見ないで　年とシワだけどんどん増えて行く親父にラクさせたいといつも思って働いてるけど何だかいつもカラまわりそして今日届いた　鉛筆書きの親父の手紙を読みながら渋谷でのんだくれてるなぜこんなにみじめになるのか自分でも分からずに苦しいだけの雪と氷の中で背中を丸めて遅い春をじっと待ってる親父幸せなんて訪ねて来ないから親父の春はいつも　いつも待ちぼうけ酔っぱらいの親父が　一番キライだったけど今の俺にはわかるような ※そして今日届いた　たまには帰えれって言う親父の手紙を読みながら渋谷でのんだくれてるなぜこんなに涙が出るのか自分でも分からずに ※繰り返し
この曲はよくコンサートの前半の最後に、ブンちゃんが一人でギター一本で歌います。生だからこの詩が私の肌に直接響いて来ます。曲がまた凄い！こちらが身動きできないほど、ブンちゃんの言葉が私の肌に突き刺さる。
番外	とりあえずビール　　　　　　　　　　　　　　詩・曲　中村ブン
	とりあえずビールをくれよ　こんな時間だつまみはいらない座ってくれよ　一緒に飲もう　走って来たからノドが乾いた不思議なもんだね　いい年してさ　娘みたいなお前に惚れて夜中に窓から抜け出すなんて　マラソンランナーしているなんてとりあえず乾杯しよう　昨日も明日もすべて忘れてとりあえずテレビを消しなよ　音のするもの何にもいらないレールの敷かれた都会の暮らし　初めて知ったよ　やすらぎなんてうれしいもんだね　いい年してさ　初恋みたいに夢中になって夜中にママゴトしているなんて　恋にうつつをぬかせるなんてとりあえず灯りを消しなよ　ガラじゃないけど星がきれいだとりあえずタバコが欲しい　けだるい体は煙を欲しがる暗闇の中　ホタルが光って　お前は隣で寝息をたててるバカやってるよね　いい年してさ　娘みたいなお前を抱いて夜中にベッドぬけだすなんて　マラソンランナー背中を丸めてとりあえず明日も来ると　テーブルの上に書き置き残してとりあえずビールが欲しい本当はなくした何かが欲しい
ブンちゃんには珍しい詩、自称「小児科シンガーソングライター」が挑戦した風鈴ソング、間違い、不倫ソング。こんな歌の状況、四十代以上になると憧れちゃいますね。
メロディーなしで、どこまでブンちゃんの世界が伝わるでしょうか。ギターを力いっぱい弾きながらの熱唱をぜひ一度、コンサートで聞いて欲しいと思います。まだまだ聞いて欲しい曲がたくさんあるんですよ。パンダのほうが年下なのに、敢えて「ブンちゃん」とちゃんづけで呼ばせて貰いました。「欽ちゃん」だって、いくつになっても「欽ちゃん」ですから。熱烈なるブンちゃんファンにはお詫びいたします。また、素晴らしい「詩」に勝手にコメントをつけたことも・・ブンちゃん情報は「中村ブンのホームページ」にでています。「中村ブン」のＨＰへは、リンクのペ－ジからどうぞ！　　　　　　　　　　　　　　2003.4.30記

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