第31作-第36作

　

第31作・昭和58年8月6日封切り

 第32作・昭和58年12月28日封切り

第33作・昭和59年8月4日封切り
第34作・昭和59年12月28日封切り 第35作・昭和60年8月3日封切り 第36作・昭和60年12月28日封切り

　

第31作

「男はつらいよ」旅と女と寅次郎
公開日 昭和58年8月6日 観客動員数 1511000人
原作 山田洋次 脚本
山田洋次・朝間義隆
監督 山田洋次
主演 渥美　清
マドンナ 都はるみ（演歌歌手・京はるみ）
配役 倍賞千恵子（さくら）
下條正巳（おいちゃん）
三崎千恵子（おばちゃん）
前田　吟（博）
太宰久雄（タコ社長）
笠　智衆（御前様）
佐藤蛾次郎（寺の下男）
吉岡秀隆（満男）		 ベンガル（京はるみのマネ−ジャ−）
藤岡琢也（芸能プロダクション社長）
桜井センリ（芸能プロダクション幹部）
木の葉のこ（京はるみの付き人）
中北千枝子（保険のおばちゃん）
関　敬六（地方のチンドン屋）
北林谷栄（佐渡の民宿のおばあちゃん）
人美　明（佐渡の食堂の主人）
佐山俊二（北海道のテキヤ仲間）
山谷初男（芸能記者＆漁師の二役）
細川たかし（矢切の渡しの客）
ロケ地 新潟県（佐渡、白根市）、北海道羊蹄山周辺
夢 天保6年、柴又で岡っ引きをしている博吉（博）は親分（タコ社長）から手柄を立てろとはっぱをかけられる。そこへ佐渡金山の一揆の首謀・寅が帰って来た。義弟が岡っ引きとわかり進んでお縄になる。
（芝居仕立てで客席から声がかかる）
あらすじ 柴又へ帰った寅、翌日は満男の小学校最後の運動会だ。博は仕事で行けないので寅が親代わりに応援に行くと張り切るが、満男は喜ばず不安になる。夕食でも気まずい雰囲気になりタコ社長の「俺だって参観日には娘から来ないでくれと言われたもんな」から寅と喧嘩になる。翌朝早く、寅は出て行った。
新潟では演歌の大物歌手が公演をキャンセルして行方不明となり、芸能記者、プロイダクションは大騒ぎ。寅はヒマなので佐渡へ帰る漁師と話し込み、佐渡まで乗せてくれと頼む。そこへ寂しげな女性も乗せてくれと言って来た。佐渡の民宿に同宿した女性は浴衣に着替えると明るくなり、寅と談笑した。恋をとるか仕事をとるかで悩んでいるようだ。寅は会ったことがあるような気がするが、何処で逢った人か思い出せない。女が寝たあと、宿のおばあちゃんから、「今の人は京はるみじゃろ？」と言われ寅はびっくり。翌日は二人で佐渡を散策するが、寅は気付いていないフリをする。時折、女は歌を口ずさみ、やはり歌の仕事は捨てられないのだろう。港近くの食堂でつい寅は「はるみちゃんは・・・」と話しかけてしまい、歌手であることを知っていたことがばれる。そこへプロダクションの社長以下4人が駆けつけ、はるみを連れ帰る。本人も二日間寅と旅をして、吹っ切れたように歌手に専念する。別れ際「辛いことがあったら、柴又のとらやへおいで」と告げる。寅は柴又へ帰って来ると、電気屋から無意識にはるみのカセットとウォ−クマンを持ち出し（盗み）聞き入る。数日後、大物歌手のはるみが寅に礼を言いに「とらや」へやって来た。そして「彼ともう一度出直そうと決めた」と元気に告げた。それを聞いた寅は対照的に沈んでいく。町内中の人が裏庭に集まり、はるみは歌まで歌ってくれる。夜半、寅はさくらの自宅を尋ね、リサイタルの切符を渡して、宜しく伝えてくれと柴又をあとにした。さくらと博が見に行ったリサイタルのステ−ジではるみは寅との出会いを語るのだった。
啖呵売
(ﾀﾝｶﾊﾞｲ)

・新潟の公会堂にて
やけのやんぱち日焼けのナスビ、色は黒くて食いつきたいが、私ゃ入れ歯で歯が立たないよときた。
今日は新潟美人が多いから、安くしゃおう。このコンパクトに櫛、セカンドバッグまでつけて、これでいくらだと思う。角は 一流デパ−トの赤木屋黒木屋白木屋さんで紅白粉つけたおねえちゃんから下さいちょうだいで頂きますと5000円が6000円はくだらない品物です。今日はそれだけ下さいとは言いません。
今日は新潟美人にサ−ビスしちゃう、さぁ、どう。
（ガ−ドマン「君、許可証持ってないんだろ、店仕舞いなさい」）
持ってませんよ。そういう恐い顔してると女にもてないよ。
じゃあね、どういう顔がもてるか、こういう顔、いつもニコニコ明るい笑顔。
ついておいで、向こうで安くするから・・・
名セリフ

寅「あれはなんて言う島だい？」
漁師「あれ、知らんのか、佐渡の島だよ」
寅「俺みたいな素人でも金山で少しくらいなら金を掘り当てられるかね？」
漁師「金山はもう終わったよ」
寅「なんだ、もう看板（閉店）か、ギリギリで滑り込めねえかなぁ」
その他

・前作から「夢」のシ−ンが劇中劇のようになっていて、映画の客から言えば、「劇中劇中劇」だ。
・満男が小学校6年生だった。
・序盤の寅と「とらや」一同（主に社長だが）の喧嘩、今作では不自然ではなかった。
・大スタ−でも市井の人と出会ったり、交流することがあるのかなぁと思わせる佳作だ。
・都はるみが大スタ−という役柄のまま出演していた。寅のマドンナがスタ−だったのはＳＫＤのスタ−役の木の実ナナ以来。
・出演に「細川たかし」とあるが、スト−リ−には全く関係ないタイトルバックのエキストラのようなものだった。「矢切の渡し」がヒットした年だったということでしょう。

　

第32作

「男はつらいよ」口笛を吹く寅次郎
公開日 昭和58年12月28日 観客動員数 1489000人
原作 山田洋次 脚本
山田洋次・朝間義隆
監督 山田洋次
主演 渥美　清
マドンナ 竹下景子（諏訪家の檀家寺、蓮台寺の出戻り娘・石橋朋子）
配役 倍賞千恵子（さくら）
下條正巳（おいちゃん）
三崎千恵子（おばちゃん）
前田　吟（博）
太宰久雄（タコ社長）
笠　智衆（御前様）
佐藤蛾次郎（寺の下男）
吉岡秀隆（満男）		 中井貴一（蓮台寺の息子、一道：朋子の弟）
杉田かおる（一道の恋人、ひろみ）
松村達雄（蓮台寺住職）
長門　勇（檀家）
レオナルド熊（旅先で会った鳶の親方）
石倉三郎（柴又のそば屋の出前）
穂積隆信（諏訪家の次男、博の兄）
人美　明（柴又の駅員）
関　敬六（高梁市のタクシ−運転手）
あき竹城（鳶の親方の後妻）
ロケ地 岡山県高梁市（たかはしし）
夢 現実のとらやが舞台
「とらや」では寅の見合い話が進んでいる。写真を見るととても美人だ（竹下景子）。寅が「とらや」へ入ろうとすると、偽の寅がなりすまして、見合いしようとしている。
あらすじ 博の父の3回忌が近づいた頃、寅は岡山に来たついでに墓参りをする。住職と娘がすれ違い、寅は一目惚れしてしまう。住職に引き留められるままに上がり込み、お酒の相手までして泊まってしまう。翌日、住職は二日酔いで起きあがれず、寅が檀家に代役で行くことになる。読経も無難にこなし、世間話で檀家を笑わせて帰ってきた。寅は重宝がられて長逗留となる。諏訪家も数日して3回忌があり、さくらや博も岡山へ集まった。住職が読経をあげるのだが、脇にいる坊主が寅だとわかり、さくらはハラハラしている。朋子の存在を知り、寅の長逗留の理由がわかる。寺の掃除から檀家のもてなしなど寅はよく働き、朋子も好感を抱いている。
ある日、住職が入浴しながら（朋子が薪をくべていたが）、「おまえは再婚する気があるのか。寅のような奴がいいのか？」と尋ねた。ちょうど寅が傍にいたのだ。返事に窮した朋子はその場を無言で離れた。寅も翌日、高梁を去った。
跡取りの一道はカメラマン目指して上京する。恋人のひろみも追うように上京するが、昼間は会えずに「とらや」を訪ねる。夜遅く、仕事を終えた一道も「とらや」を訪ね、再会し互いの愛を確認する。
寅は家族を集め、「仏の道に仕えようと思う」と言いだし周囲を笑わせる。さくらと博には意味がわかるのだが、出家することに不安を感じる。そんな折り、弟の様子を探りに朋子が上京し、「とらや」を訪ねてきた。これはどうもホンモノらしい。その日のうちに岡山へ帰る朋子は寅と二人きりになりたくて、駅まで送って欲しいと告げる。寅は朋子の気持ちを察しつつ、さくらを伴って駅まで見送る。寅の袖を引いて朋子は打ち明ける。「父が言ったことを気にしていたら、ごめんなさい・・・」、ここで寅のほうから求愛すればいいのだが、できない寅。朋子は後ろ髪引かれながら京成電車に乗り込む。恋愛下手な兄をさくらは慰めるのだった。
啖呵売
(ﾀﾝｶﾊﾞｲ)

なし
名セリフ

・題経寺での修行は三日と保たなかった寅について
御前様「仏教における修行とは、煩悩を断ち切る命懸けの闘いです。寅のごとき、煩悩が服着て歩いてような男がどうして修行できますか」
・上京した一道について、朋子に
寅「男の子は父親とケンカして家を出るくらいじゃなきゃ、一人前とはいえません、私がいい例です。」
その他

・今回の夢は現実の「とらや」を夢見ている設定、マドンナも最初から顔をだした。
・序盤の寅と「とらや」一同（主に社長だが）の喧嘩が今回はなかった。
・マドンナとして朋子は寅といい雰囲気だが、竹下景子には「知的イメ−ジ」があるので、イマイチ盛り上がらない。
　寅の相手にはもう少し世の中で揉まれたような女性が似合うと思うのだが・・・。（個人的には竹下景子ファンなので楽しめました）
・啖呵売のシ−ンが全くないのも珍しい。
・諏訪家では遺産を処分して3兄弟で分けた。それを博は朝日印刷の機械に投資した。タコ社長はお礼に、満男にパソコンをプレゼントした。（当時、パソコンはまだまだ自宅にある人は少なかった）

　

第33作

「男はつらいよ」夜霧にむせぶ寅次郎
公開日 昭和59年8月4日 観客動員数 1379000人
原作 山田洋次 脚本
山田洋次・朝間義隆
監督 山田洋次
主演 渥美　清
マドンナ 中原理恵（風子・美容師）
配役 倍賞千恵子（さくら）
下條正巳（おいちゃん）
三崎千恵子（おばちゃん）
前田　吟（博）
太宰久雄（タコ社長）
笠　智衆（御前様）
佐藤蛾次郎（寺の下男）
吉岡秀隆（満男）
美保　純（タコ社長の娘・今作よりレギュラ−）		 渡瀬恒彦（オ−トバイの曲乗り・トニ−）
佐藤Ｂ作（逃げた女房を捜す男・福田栄作）
秋野太作（登）
人見　明（理髪店の主人）
関　敬六（テキヤ仲間）
加藤　武（風子の結婚式参列者）
谷　幹一（風子の結婚式参列者）
ロケ地 盛岡、釧路、根室、中標津
夢 逃亡生活から故郷へ戻った寅、身内は組織に殺されていた。復讐を誓い、組織のアジトのクラブへ向かう。撃ち合いの末、情婦（中原）は寅をかばって銃弾に倒れる。
あらすじ 満男は中学に進んだ。タコ社長の娘・あけみは婚約して周囲は明るいム−ドが漂う。
盛岡で寅は登と再会し、実家に招かれるが「俺のような渡世人は歓迎される立場ではない」と固辞する。
釧路の床屋で散髪していたが、応募してきた風子を鏡越しに見る。その後、公演で職が見つからずしょんぼりしている風子に声をかけ、お互いに「フ−テン同志」で話が弾む。寅は根室へ向かうが風子も同行してきた。旅の途中の宿では女房を捜す男（栄作）と知り合い、奇妙な三人旅となった。ようやく居所を捜しあてたが、その女房はすでに別の男と暮らしていた。
根室で寅はテキヤ仲間と合流して売に励む。風子は気晴らしにオ−トバイのサ−カスを見に行く。根室での仕事を終えた寅に風子は「寅さんについて行きたい・・・」と告げる。しかし、寅は「堅気の仕事、堅気の男を捜せ」と諭し、困った時は『とらや』へ連絡しろと行って別れる。風子は「寅さんがもう少し若かったら、結婚できるのに・・・」と名残惜しそうだった。
あけみの結婚式でバタバタしている『とらや』を栄作が訪ね、風子が東京に来ていると告げる。消息がわからず寅は心配して、新聞に「尋ね人」の告知を載せる。するとオ−トバイ乗りのトニ−が来て「風子は俺と暮らしているが、病気で寝込み、寅さんに会いたがっている」と告げる。寅はすぐに二人のアパ−トを訪ね、風子を『とらや』へ引き取る。柴又へ来ると風子はみるみる元気になり、近場で職探しを始める。寅は正式にトニ−に対して「風子から手を引いてくれ」と直談判し、トニ−も納得した。寅は風子に似合いの理髪店の跡継ぎを捜さなくちゃと張り切っていた。ところが風子は自分の断りなしにトニ−と交渉した寅をなじり、出ていってしまう。
夏になり、風子から結婚式の招待状が届く。地元の北海道で同業の理容師と結婚するらしい。博、さくら、満男の三人が出席する。どこで聞いたのか、寅も野山を越えてフラフラになって辿り着く。背後には熊が迫っていた。猟友会が銃を持って山にはいり寅を救出する。
啖呵売
(ﾀﾝｶﾊﾞｲ)

・根室でオルゴ−ルの売
東京は一流デパ−ト赤木屋黒木屋白木屋さんで、紅白粉つけたおねえさんから、下さい頂戴でお願いしますと1000が2000はくだらない代物です。今日はそれだけ下さいとは言わない、どう、1300。
よし、やけのやんぱち日焼けのナスビ、腹切ったつもり、1000円でどう！
風子「おじさん、買った！」（風子が客に混じっていた）
よし、そこのおねえちゃんいい買い物したね。恋人のお誕生日のプレゼントにこれが1000円ね、もうこの値段では売らないよ・・・
名セリフ

・寅「テキヤ殺すにゃ刃物はいらぬ、雨の三日も降ればいいってね」

・寅があけみと風子を比べて
「労働者から搾取したお金でハワイに新婚旅行に行く娘もあれば、ねぐらのない小鳥のように夜露にうたれて泣いている娘もある、世の中さまざまだ」
その他

・最近の寅はどうも恋に燃え上がらず、保護者的な行動が目につく。偶然かもしれないが、私が個人的な趣味で「今回のマドンナは好きじゃない」と思うと、寅さんも燃えないような気がする。
・ラストの熊騒動はドタバタの三流喜劇でいただけない。
・劇中、トニ−と風子が恋仲になる過程が描かれず、いきなり同棲しているのに驚かされる。
・寅がトニ−に「手を引け」という場面はかつてない男らしいシ−ンだった。
・風子は寅さん・トニ−・結婚相手と、ころころ鞍替えするようで好きになれない。
・全体に笑うシ−ンの多い作品だが、風子の性格の設定、熊騒動のラストなどで、イマイチの作品だ。
・マドンナで当時の人気女優（歌手）がわかる。昭和59年は「東京ららばい」の中原理恵が売れていた頃なのだろう。
・今回からタコ社長の娘としてあけみ（美保　純）がユニ−クなキャラで登場。
2005.1.10更新

　

第34作

「男はつらいよ」寅次郎真実一路
公開日 昭和59年12月28日 観客動員数 1448000人
原作 山田洋次 脚本
山田洋次・朝間義隆
監督 山田洋次
主演 渥美　清
マドンナ 大原麗子（富永ふじ子）
配役 倍賞千恵子（さくら）
下條正巳（おいちゃん）
三崎千恵子（おばちゃん）
前田　吟（博）
太宰久雄（タコ社長）
笠　智衆（御前様）
佐藤蛾次郎（寺の下男）
吉岡秀隆（満男）
美保　純（タコ社長の娘・あけみ）		 米倉斉加年（証券会社課長・富永）
辰巳柳太郎（富永の父）
津島恵子（富永の姉）
風見章子（ふじ子の母）
関　敬六（テキヤ仲間）
桜井センリ（九州のタクシ−運転手）
ロケ地 鹿児島県枕崎、茨城県牛久沼
夢 怪獣が現れて、日本を破壊する。筑波山に隠棲する車博士のもとへ総理大臣（太宰）が同郷の誼で意見を求めて来る。博士は怪獣と対峙し、印籠から不思議な光線を出してやっつける。
あらすじ 新婚のあけみが夫と喧嘩して『とらや』で愚痴をこぼしている。ようやくタコ社長が説得したところへ寅が戻り一悶着となる。寅は機嫌をそこね上野で飲み、居合わせた会社員（富永）にご馳走になる。貰った名刺を便りに翌日、御礼に寅が出向くと大きな証券会社だった。残業の終わるのを待って、寅と富永はその夜も赤ちょうちんで飲み、酩酊する。遅くなり牛久の富永の自宅へ泊めてもらうことになる。富永は翌朝早くに出勤、寅は一人で夫人と対面する。しばらくは話に興じるが一戸建てに二人きりでいることに気づき、慌てて帰る。しかし寅の頭の中は夫人（ふじ子）のことでいっぱいで、『とらや』に帰ってもボ−ッとしている。数日して富永は予告もなしに蒸発する。寅のような生活に憧れたのかもしれない。寅は筑波山での売の帰りに牛久の富永邸を訪ね、蒸発したことを知る。寅はふじ子と息子の寂しさや不安を紛らわすために『とらや』へ招待して賑やかに会食する。数日して富永が実家のある九州で目撃され、ふじ子は九州へ向かうが、聞きつけた寅も羽田空港へ急ぎ合流する。寅が富永の上司という設定でまずは実家を訪ね、父親の酒の相手を勤める。しかし手掛かりはなく、その後は二人で富永の思い出の地を捜し歩く。寅にとっては至福の旅だった。柴又へ帰ってから「富永がず-っと行方不明ならいいのに・・・」などと願う自分に恥じ、自己嫌悪する。そこへ富永が訪ねて来た。一人では家族の待つ牛久へ帰るのが辛いようで、寅が同行して送り届けた。親子三人が抱き合う姿を見届けて、そのまま旅の人となった。
啖呵売
(ﾀﾝｶﾊﾞｲ)

・筑波山で
国の始まりが大和の国なら、島の始まりが淡路島
泥棒の始まりが石川の五右衛門なら、英語の始まりがＡＢＣ（隣のガマの油売りの口上が聞こえる）
さあて、こちらもお立ち会いだ、どう
続いた数字が二、兄さん寄ってらっしゃいは吉原のかぶ
仁吉が通る東海道、三三六方で引け目がない、
産で死んだが三島のお仙、ねえ、手にとって見てちょうだい
四谷赤坂麹町、チョロチョロ流れるお茶の水
名セリフ

・九州で寅はふじ子と同宿を避け、タクシ−運転手と泊まる時
寅「好きであんな奴のところに泊まるわけじゃありません。旅先で妙な噂が立っちゃ課長さんに申し訳ないと思いまして」
ふじ子「つまんない、寅さん」
寅「奥さん、俺はきったねえ男です。ごめんなすって」（と襖を開けたつもりが押入を開ける）
その他

・久しぶりに寅さんが一目惚れした。（寅さんの趣味は私の趣味と似ているようだ）
人妻としてのマドンナはテキヤの女房だった音無美紀子以来か。寅にしては大胆な二人旅だ。
・マドンナの大原麗子は二度目の登場
・猛烈サラリ−マンの実態を描き、ラストはほのぼのとした結末となる佳作だ。
・当時は「エリマキトカゲ」が流行っていたようだ（セリフに出てきた）
2005.1.11更新

　

第35作

「男はつらいよ」寅次郎恋愛塾
公開日 昭和60年8月3日 観客動員数 1379000人
原作 山田洋次 脚本
山田洋次・朝間義隆
監督 山田洋次
主演 渥美　清
マドンナ 樋口可南子（江上若菜・写植オペレ−タ−）
配役 倍賞千恵子（さくら）
下條正巳（おいちゃん）
三崎千恵子（おばちゃん）
前田　吟（博）
太宰久雄（タコ社長）
笠　智衆（御前様）
佐藤蛾次郎（寺の下男）
吉岡秀隆（満男）
美保　純（タコ社長の娘・あけみ）		 平田　満（若菜と同じアパ−トに住む酒田民夫）
松村達雄（酒田の恩師、大学教授）
杉山とく子（アパ−トの大家）
初井言栄（若菜の祖母）
関　敬六（テキヤ仲間・通称「ポンシュ」）
ロケ地 長崎県五島列島、秋田県鹿角市
夢 ＜うばすてものがたり＞というタイトルつき
最後の食事を終えたおじちゃんとおばちゃんを寅と博が背負って行こうとするが、おばちゃんが重くて寅は後へひっくり返ってしまう。
あらすじ

旅先で、たまたま転んで起きあがれないおばあちゃんを助けたことから、寅と仲間のポンシュは自宅へ招かれ接待をされるが、なんとその晩におばあちゃんは息を引き取る。キリスト式の葬儀で孫娘から世話になったと礼を言われる。娘は最後の夜の様子を聞きたいと言ったが葬儀が始まるので、その場は別れた。
柴又に帰ってそわそわしている寅に孫娘（江上若菜）から手紙が届く。寅が早速手紙の住所を訪ねてみると、若菜は部屋へ招き入れ、葬儀で休んでいた為に失業したと告げる。寅はタコ社長や博に職場の紹介を依頼し、柴又にも招待する。寅の気持ちはだんだん若菜に傾いてくる。ある日、若菜と同じアパ−トの司法試験受験準備中の学生（酒田）をからかうと、若菜は不機嫌な顔になる。寅は二人が互いに思い合っていると直感して、交際のきっかけ作りを手伝うことになる。三人で映画を見に行く約束をしておいて、寅は仮病で休み、二人は初めてデ−トをした。酒田は寅に教えられた通りに、レストランでの食事も無事済ませ、アパ−トへ連れだって戻る。若菜は自分の部屋に酒田を招き、紅茶の準備をしながら「泊まっていってもいいのよ・・・」とつぶやくが、酒田は気疲れで眠り込んでしまった。寅は二人を結びつけたものの複雑な心境で、周囲にあたりちらしている。しくじったと思った酒田は翌日から行方不明となり、若菜は寅に助けを求める。寅、若菜、教授（酒田の恩師）の三人で酒田の故郷・秋田の山奥を探し回る。そこへ自殺することも出来ず、フラフラになった酒田が下山してくる。若菜と酒田は互いに告白し合う。
寅は一人寂しく五島列島の教会に立ち寄るが、なんとそこにポンシュが働いていた。
啖呵売
(ﾀﾝｶﾊﾞｲ)

・運勢鑑定本のバイ
天に軌道のある如く、人にはそれぞれ運勢というものを持っております。とかく丙午（ひのえうま）の女は夫を食い殺し、その晩年は・・・てなことを言ってるが、ぶっちゃけた話がこれも商売、女房子供を食わせなくてはならない。ここにある、こういう道具もネタ元という問屋へ行って、これを一日いくらで借りてきている、だから運勢のこともよく判らない。でもね、10年20年同じことを続けていると、100回に一度、いや50回に一度、ピタリと当たることがある。そこのお嬢さん、今恋をしているね・・・
名セリフ

・おじちゃんが中学生の満男に向かって
「どうせ学校の勉強なんか、なんの役にも立たないんだから」
・寅のセリフ
「田にしたもんだよイナゴのションベン、見上げたもんだよ屋根屋のフンドシ」
その他

・マドンナを初めて見た時は寅はそれほど心が動かされた訳ではない。寅が若い二人の恋を後押しするパタ−ンだ。
・ポンシュ（関　敬六）が珍しく出番が多かった。
・マドンナが柴又を訪ねた時、満男が周辺の観光ガイドをしていた。意外にもこういうシ−ンは珍しい。
・マドンナ（樋口可南子）は初めて訪ねた「とらや」で風呂にはいるが、普通はありえない。それが不自然に感じないところが「寅さん映画」たる所以か。
・マドンナの口から（酒田に対して）「こんな夜が来ると思ってた。泊まっていってもいいのよ」という言葉が出るが、このセリフは無いほうがいいと思う。
・マドンナの職業が「写植」なのだが、今では無くなった職業だ。
全体的には面白い作品だった。

　

第36作

「男はつらいよ」柴又より愛をこめて
公開日 昭和60年12月28日 観客動員数 1407000人
原作 山田洋次 脚本
山田洋次・朝間義隆
監督 山田洋次
主演 渥美　清
マドンナ 栗原小巻（式根島の小学校教師、島崎真知子）
配役 倍賞千恵子（さくら）
下條正巳（おいちゃん）
三崎千恵子（おばちゃん）
前田　吟（博）
太宰久雄（タコ社長）
笠　智衆（御前様）
佐藤蛾次郎（寺の下男）
吉岡秀隆（満男）
美保　純（タコ社長の娘・あけみ）		 田中隆三（式根島の旅館の若旦那）
川谷拓三（酒井、真知子の親友の亭主：ロシア語の教授）
森本毅郎（テレビ番組司会者）
関　敬六（テキヤ仲間）
人見　明（柴又商店街、備後屋主人）
アパッチけん（同窓会の幹事）
松居直美（夢の中の打ち上げレポ−タ−）
ロケ地 伊豆下田、伊豆七島（式根島）
夢 日本人初の宇宙飛行士に選ばれた寅だったが、打ち上げ直前になって怖じ気づく。秒読みが始まり「あ〜、オシッコしたいよ、オシッコちびっちゃう〜」
あらすじ

あけみが亭主を残して家出した。タコ社長はテレビ番組の「尋ね人」のコ−ナ−で涙ながらに訴えた。あけみは「とらや」へ電話を入れ、下田にいると告げた。折良く柴又に戻った寅に社長はあけみを捜して連れて帰るよう頼む。早速、寅は下田のテキヤ仲間を通じてあけみを捜す。すぐ見つかったのだが、あけみの気持ちがほぐれるまで滞在することにする。二人は気晴らしに目の前の島に行ってみようと船に乗ると、それは式根島行きだった。船室で島で同窓会をする若者一行と知り合い、若い美人教師と聞いて寅は一行と紛れて楽しむ。島に着いたあとも寅は同窓会にまで参加して盛り上がる。翌日には教え子は船で帰ったが、見送る真知子先生の横には寅がいた。先生も堀切（柴又の近く）出身で寅と意気投合し、島をガイドする。ほったらかしにされたあけみは宿の若旦那に島を案内されるが、若旦那がいきなりプロポ−ズしたので、人妻であることを告げ、島を離れることにする。今度はあけみが残りたい寅を引っ張って柴又へ帰った。寅は授業中の先生を訪ね、別れを告げるが先生も寂しそうだった。
柴又での寅は元気なく寝込んでいた。そんなところへ真知子がフラリと柴又に訪ねてきた。「とらや」の団欒で寅は大いにはしゃぎ、真知子も楽しそうだった。翌日、真知子は亡くなった親友の亭主（川谷拓三）とその娘と食事し、プロポ−ズを受ける。真知子は即答を避け、寅に相談する。強く引き留めて貰いたい真知子だったが、寅は「その方はきっといい人ですよ」と促した。
正月、旅先の浜名湖で遊覧船のアナウンスが聞こえる。その声は同窓会の幹事だった男だった。
「よ〜し、俺も張り切って売るか」
啖呵売
(ﾀﾝｶﾊﾞｲ)		 ・エンディングの浜名湖でのバイ
やけのやんぱち、日焼けのナスビ、色が黒くて食いつきたいが、私ゃ入れ歯で歯が立たないときた
四谷赤坂麹町ちょろちょろ流れるお茶の水、粋なねえちゃん立ち小便
白く咲いたは百合の花、四角四面は豆腐屋の娘、色は白いが水くさい
どう、続けてまけちゃおう・・・
名セリフ

・島を案内した時の真知子が寅に
真知子「独り者でしょ、首すじが寂しげなの、生活の垢がついてないというのかしら」
寅「ネクタイしてないせいじゃないですか」
・満男の寅評
「おじさんのやることは、世間体なんか気にしてないし、人におべっかも使わない、お世辞言ったりもしないもんな。尊敬するって程じゃないけど」
その他

・満男が上のセリフのように寅のよき理解者になってきた。
・あけみは満男同様にますます寅さん贔屓になってきて、存在感がでてきた。
・あけみの亭主の名前は「しんご」という（顔は出さないが）
・真知子が教授（川谷拓三）と会ったお茶の水のレストランは当時実在した「バラライカ」
・有楽町に「マリオン」が出来ていた。
・あけみが島で露店風呂にはいり、立ち上がった時に後姿が露わになり、尻の割れ目まで写った。（寅さんシリ−ズで女性の裸は初めて）
・島へ向かう教え子は11人、寅を加えて12人、「二十四の瞳」を意識している。
・栗原小巻は第4作以来、2度目のマドンナ
2005.5.21更新

　

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