子供のころの11月は寒かった。下旬ともなればコ-トやオ-バ-が必要だった。そんな話をする時、必ずひきあいにでるのが、「酉の市」だ。年によって二の酉（11月中に酉の日が2回ある年）と三の酉（同3回ある年）がある。三の酉ともなると本当に寒かった。オ-バ-を着込んだ人が熊手を頭上高く持ち帰る。縁起ものだから、買うほうは値切ったぶんだけ祝儀にする。売り手は感謝を込めて手締めをする。その酉の市、つい最近まで浅草だけかと思ったら各地の神社でも開かれているようだ。しかし、浅草の「お酉さま」にかぎる。ちょっと脇にはいると吉原だ。今では落語などで聞くだけとなったが、全盛のころはどんなに華やかだったろうかと、一人ニヤニヤしてしまう。三の酉まである年は火事が多い、とはよく言われるが、その根拠もいろいろある。そんな話を肴に熱燗で、そんな季節だ。