雛祭。女児の節句だが、私は姉が二人いたので、毎年この時期は華やかだった。古い箱からひとつひとつ雛人形をだして飾る母と姉の姿はそれだけでよかった。五人囃子の笛が無かったり、お内裏さまの鼻に傷があったりしても気にしない。三人官女の位置だとか、菱餅の色などどうでもいいことを自然に覚えていくものだ。あの当時も飾り方を記したマニュアルがあったのだろうか。3日が過ぎるとすぐに元の箱に仕舞われて「早く片づけないと、嫁に行けなくなるんだよ。」とまたひとつ、根拠のない言い慣わしを覚えてしまうのだ。